心理学で何がわかるか

心理学で何がわかるか (ちくま新書)

心理学で何がわかるか (ちくま新書)

本を読む前までは心理学は哲学や学者の分析が主流かと思ったが、実際は科学的アプローチで研究しているよう。特に最初の章で統計の解析に関する解説が多く記述されているので、「これは心理学の本か?」と疑うほどである。それほど科学的にアプローチしているということか。
〇人柄は遺伝で決まるか?
児童期は親の教育等の要因の影響が大。加齢とともに遺伝の影響力が出るという結果も。また環境要因という面も。
〇暴力的な映像を暴力を引き起こすか?
一部には見られるが、統計的に有意な数値とは認められない。

〇記憶力は鍛えられるか?
鍛えられない。ただし記憶する方法が改善される。忘却曲線による記憶の定着や自然崩壊説などが紹介されている。根本を理解すれば記憶の定着が促される。

うつ病は薬で治せるか?
うつ病によりニューロン数や脳容量が減少する。回復しても容積は回復しないし脳血流も異常を来たす。ニューロンを再生するには学習などが必要だが、うつ病が長期間続くと再生するより死滅する数のほうが大きいのではという推測。投薬治療は再発率が高い。抗うつ薬は副作用が大きいことも(自殺、不安、興奮、性機能障害など)。心理療法(認知行動、対人関係)による改善、運動での回復は再発率が低い。

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特に印象に残ったのはうつ病の記述。仕事などでうつ病になった人はまたうつ病になる可能性が高いと言われていたし、また自分でも感覚的にそう思っていたのだが、この本を読んで心理学の面でなく医学的にもそれが正しいのかと認識した。自分が思っていた心理学の認識を改める必要があると感じた。