財政危機と社会保障

財政危機と社会保障 (講談社現代新書)

財政危機と社会保障 (講談社現代新書)

約5年前に発行された本であるが、財政危機と社会保障問題は5年前から全く改善されていない。
課題、改善策はそっくりそのまま当てはまるだろう。
 
世代間格差が大きすぎる年金制度、自己負担額が少なすぎる医療・介護・保育制度。
今の制度のままでは財政的には持続できないから、簡単に言ってしまえば莫大に税金を徴収するか、支給(控除)額を劇的に減らすかのどちらかをとる必要がある。
 
ただしどちらも国民の納得が得られないから、もうちょっと市場経済カニズムを導入しようという提案である。
たとえば保育制度でいえば多額の補助金により全国一律の保育料が実現されている。
これにより需要が増大したにもかかわらず、供給側は「がんじがらめの既得権益」により抑制されているため、ますますミスマッチが大きくなる。
そこで既得権益を徐々に取り払っていこうという提案である*1
 
ここで思うのは、やはりどの案も実現には程遠いということである。
結局どの案も誰かが負担を強いられるのだから、選挙では戦えなくなるのを避けるべく、どの改革も停滞し、さらに悪化していくという悪循環である。
おそらく筆者もその点を認識しているからこそ、少しでも国民の理解を深められることを期待しているのだろう。
 
難解な内容を問題点→原因→解決方法といった論調で書かれているので筆者の主張が簡潔に書かれている。
非常にわかりやすかった。

*1:もっと公費を投入しようという案は財政的に無理という前提