経営パワーの危機

倒産寸前の会社に出資している親会社の幹部のひとりがその会社の社長に突然就任。そこから立て直すにはどのような手段をとっていくかを書いた経営の小説。
・リーダー次第で組織は大きく変わること
主人公は就任当初に経営に関するデータ(製品価格、利益など)を指摘し、そこから改善を行なうように指示する。そのときに「粗利益率は〇%以上を確保しない価格では売ってはいけない」など、明確な数字を出す。そういうことを断固としてやっていくことができるのはリーダーのみ。
・コミュニケーションのとり方について、個々人の性格によって変えていくことが興味深かった。ある人には社長であるにもかかわらず敬語を使って丁寧に話を聞いたり、また「声が大きい」人には社内の雰囲気を変えられるのを防ぐためにビシッと論理的に反論したりする。また主人公は以前は組織間で情報の乖離が発生していたが、そこの原因を突き止めコミュニケーションを通じて問題発生を防ぐといった、まさにコミュニケーションの土台を作ることもリーダーの役目である。

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特に印象に残ったことは、「シナリオを作ること」である。主人公はさまざまなシナリオを練り上げて仕事を行なっている。「〇ヶ月までに赤字を減らす。そのためにはまず〇〇から着手する」とか、「ここでこう発言するとメンバーはこのように反応して、裏ではリーダーが誘導しているものの、メンバーたちはあたかも自分たちが意思決定しているがごとく行動をとることで、より責任を背負って仕事をするようになる」など。このように倒産寸前の会社は社員たちは以前より仕事の醍醐味を得られることで仕事に集中し、結果を出すことでさらに仕事に集中するというプラスの循環に持っていくことに成功している。その間も同時並行で、会社が最悪な状況を脱したと認識した直後に次の発展を目指すためのストーリー作りを主人公は行なっていく。
このように考えることは特に経営に限った話ではないと思う。ソフトウェア開発のプロジェクト管理だってこれと同等の考え方をすることができると思う。